『エピソードⅧ:初めての恋人』 (長文となります為、計3回に分けてお送り致します。お時間に余裕のある方はお付き合いくださいませ。) 皆さんは、初めて付き合った人とのことを覚えていますか。 良くも悪くも、目に映る全てのモノ・コトが新鮮で、それまでの退屈で鬱蒼とした毎日が、まるで別世界のように感じる。 その人のことはもちろんだけど、自分が生きている全ての時間がキラキラと輝いてみえる。 私はそうでした。 この感覚にそれ以降、もう二度と触れられた記憶はありません。 いわゆる初恋の思い出は、月日とともに「回顧バイアス」により歪められ、これ以上とない素敵な人、またとない素晴らしい日々として、記憶を美化するアップデートを繰り返していく。 私の初めて手にしたミニ四駆は、何を隠そう、この「ホライゾン」でした。 (当時の写真は、残念ながら残ってはおりません) それは、小学4年生の春。 巷では、第二次ミニ四駆ブームの幕開けとなるフルカウルミニ四駆の登場で、大いに盛り上がりを見せていた。 それまでよく遊んでいた友人達が、こぞってミニ四駆を持ち始め、自然な流れで自分も興味を持った。 初めてのミニ四駆。 初めての自分のマシーン。 どれを選ぼうか。 地元の聖地、「マルタカヤ模型店」へ友達と向かい、積まれたミニ四駆の箱、箱、箱。 夢のような光景に酔いながら、手を伸ばす。 誰もがマグナムセイバーやソニックセイバーを手に盛り上がっていたあの頃。 私はどちらかといえば、ソニック派であった。 ソニックの箱を手に取り、思いを高める。 感動の対面。 レジまで向かう歩数を遥かに上回る脈拍。 この刹那の出来事が、まるで数時間にも思える至高のひととき。 私はカウンターへ着いた。 が、 それを持ち帰ることはできなかった。 どうしても。 どうしても、だ。 何故か。 実は、当時お小遣い制度がなかった私は、その数日前から、親にミニ四駆が欲しい旨を伝え、必死にその魅力をプレゼンテーションしていた。 ミニ四駆はどういった費用対効果をもたらすのか。 友人との新たなコミュニケーションツールとなり、制作を通じて、脳へ深い刺激を生み出す効果等。 数日を経て、稟議が承認、可決され、晴れて私は購入費用618円(当時のミニ四駆本体の税込金額のみ)を預かっていた。 続く。
2024/05/26 22:41:18